ストーリーとしての競争戦略 楠木 建
「優れた戦略には、ストーリーがある」
今回は、戦略に関する本です。経営の本であり、戦略の本でもある本書は、ストーリーという観点からこの二つに肉迫しています。戦略とは何か、優れた戦略を作るには、経営というものに関わる立場にある人なら、誰もが知りたいことが実によくまとまっていると思います。
———————————-内容の一部を紹介————————————–
- 戦略の定義とは、組織がその目的を達成する方法を示すような、資源展開と環境との相互作用の基本的なパターン。
- 戦略の本質は、違いをつくってつなげること。因果論理のシンセシスであり、特定文脈に組み込まれた特殊解。
- ビジネスモデルが静止画であるのとは対照に、戦略ストーリーはダイナミックな動画で表される。
- 戦略の対象範囲には、競争戦略と全社戦略の二つのレベルがある。競争戦略は競争の土俵が決まっていてある企業の特定の事業がその競争の土俵で他社とどのように向き合うのかにかかわる戦略。一方の全社戦略とは、どのような事業のポートフォリオであるべきかということを考えるもの。
- 競争戦略の勝ち負けの基準は、持続的な利益を生み出せるかどうか。
- 利益の源泉は、業界の競争構造と戦略によって決まる。業界の競争構造には、業界内部の対抗度、新規参入の脅威、代替品の脅威、供給業者の交渉力、買い手の交渉力というポーターの五つの圧力が存在する。業者の競争構造が魅力的でなくとも、戦略によって持続的な利益を確保することは可能。
- 他社との違いのつくり方には、ポジショニングと組織能力の二つの方法がある。他社と違ったことをするのがポジショニングで、他社と違ったものを持つのが組織能力。他社が簡単に真似できず、市場でも容易に買えないという組織特殊性の条件を満たすものが組織能力となり、競争優位の源泉となる。また、ポジショニングがトレードオフを強調するのに対して、組織能力の鍵は模倣の難しさにある。
- 組織能力の模倣の難しさには相互に関連しあう3つの理由がある。その3つとは、因果関係が不明確であるという暗黙性、形成されるまでの企業の歴史的なプロセスをたどる必要があるという経路依存性、組織能力は時間とともに進化するという進化性。
- ニッチを目指すなら成長を目指してはいけない。
- 戦略ストーリーの評価基準はストーリーの一貫性。一貫性の次元として、ストーリーの強さ、ストーリーの太さ、ストーリーの長さの3つが考えられる。ストーリーの強さとは、因果関係の蓋然性が高いこと、ストーリーの太さとは、構成要素間のつながりの数の多さのこと、ストーリーの長さとは、ストーリーの拡張性や発展性が高いということをそれぞれ意味している。
- 目標があって目的がない。それは作業であって仕事ではない。
- 本質的な顧客価値を突き詰めるとは、「誰が、なぜ喜ぶのか」をリアルにイメージするということ。
- コンセプトは価値中立であるべき。
- クリティカルコア(戦略ストーリーの一貫性の基盤となり、持続的な競争優位の源泉となる中核的な構成要素、の定義)には、他のさまざたな構成要素と同時に多くのつながりを持っていること、一見して非合理に見えるということの二つの条件が存在する。
- ストーリーの本質は、部分の非合理を全体の合理性に転化するということにある。部分では非合理に見えるのに、全体で見ると強力な合理性を獲得しているというのが、賢者の盲点。
- 競争優位の階層には、持続性が低いものから外部環境の追い風、業者の競争構造、ポジショニング/組織能力、戦略ストーリー、クリティカルコアという5つのレベルが存在する。
- 戦略ストーリーを持つ会社の競争優位が持続する背景には、他社が戦略の個別の構成要素を真似て自滅するという自滅の論理が働いている。
- 戦略ストーリーの模倣が企業間の差異を増幅するメカニズムには、ストーリーの交互効果についての理解の欠如→個別の構成要素をベストプラクティスとして模倣・導入→キラーパスの意識的な忌避→交互効果の不全→構成要素の過剰→従来の戦略の一貫性の喪失→パフォーマンスの低下→企業間の差異の増幅
- 戦略ストーリーの原則
- エンディングから考える
- 普通の人々の本性を直視する
- 悲観主義で論理を詰める
- 物事が起こる順序にこだわる
- 過去から未来を構想する
- 失敗を避けようとしない
- 賢者の盲点を衝く
- 競合他社に対してオープンに構える
- 抽象化で本質をつかむ
- 思わず人に話したくなる話をする
- 一番大切なことは、自分が面白いと思えるだけでなく、誰かのためになるということ。長続きするには、それが必要不可欠。